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新版今日の輸血新版 今日の輸血 8冊目

最近献血について取り上げることも多いので、画像は普段より大きめで。
なお、この本は97年に出た旧版ではなく、新版のほう。
本は去年の年末に出たばかりなんだけど、その出る直前に献血にはいくつかの制度変更があったので、是非新版でお読みください。*1
専門用語が多くわかりづらいことも多かった*2ですが、献血について、僕が抱いていた疑問はこれを読んでほとんど解消されました*3
輸血は、しないにこしたことがないわけです。
そういう意味では需要を抑える努力をしなければならない難しい事業です。*4
さらに言ったら、一回の献血に対して行われる検査は一万円くらいのものなんだそうで、安全性と利益のバランスをどこでとるのかはなるほど難しい。
法的な側面も考えなければなりませんしね*5
これからの血液事業がどうなっていくのかわかりませんが、高い理想の実現目指してがんばってほしいと思います。
そのためには、例えば交通事故よりリスクの低いような事例にヒステリックにわめくことのないよう*6、勉強していかなければならないと思うわけです*7
まあ、提供者の理解を促進するようなものにしてほしい、という僕の希望については触れられてなかったし。
それに少人数のリピーター確保による安全と供給の安定を図るというのであれば、献血回数によって新聞に名前が出るくらいのことはあってもいいんじゃないでしょうか。
そういうふうに献血制度にはまだまだ思うところは残ったんですけど、現状を理解するにあったっては、この本読んで十分に目的を果たせました。

教えてください。富野です教えてください。富野です 9冊目

富野監督は、僕と問題意識が似てるのか、対談相手に呼んでる人選が、興味深い人ばかりで、実に面白かった。
何でもかんでも体感とエクササイズで片付けて、生真面目を憎みつつ、やたらと自虐したがる*8監督には、ちょっと閉口気味になったけども*9
監督の憎む、頭の良さや生真面目さってのは、効率を重んじる近代合理主義の結実*10だと思うんで、そのあたりについても話が聞きたかったのですが、なかったのが残念。
加えて言えば、監督の問題意識に沿った人選ではあったけど、監督の問題について沿った人選ではなかったので。物言いが外向き過ぎ。
興味を覚えた人物については、著作を追ってみたいと思うので、ここで触れることもあるでしょうから内容は割愛。
坂村健かづきれいこ中村好寿は特に面白かった。*11
そういうのに含まれないだろう、印象深かった部分をちょっと紹介。
1)臨床心理士の三沢直子
描画テストによって、今の日本人は前頭連合野の統合に問題があるのではないか、その原因は母子カプセルに代表されるような、地域社会の崩壊によって子育てが母子関係のみに封じ込められてることではないか、ということをやってる人。
子育てとは健全な母子関係に基づく、という言説をよく耳にする*12けど、それは子育てを母子関係のみに負担させようとする圧力、思考停止になってないか?というスタンスには学ぶべき点が多いと思った。*13
監督も絵に携わる人間なので、話がすごく面白かった。
3)国際日本文化研究センター所長の山折哲雄
中世の権力というと、武家、寺、そして公家が出てくるわけですか、公家の権力の源泉ってのが何かって話が面白かった。
武家は武力、寺は宗教とわかりやすいんですが、お公家さんがなんか偉そうなのはわかっても、どうして偉いのかはそういわれれば僕も言語化できなかったです。
その答えは美意識だって。
いろんなものに階層や儀式を持ち込み、偉い人と偉くない人の序列を作り、その選定に当たることで偉さをかもし出すという……言われればなるほど、という感じです。
それは明快でなく非効率なんですが、反面暴力を伴わない平和的(総体的な問題ですが)な権力でもある、と。
そして、三頭政治や鼎立を持ち出すまでもなく、二つの権力は対立せざるをえないが、三つならば安定する(反面、足の引っ張り合いに終始するが)ということは、歴史を見ても明らか。
軍事力と宗教によって政治が語られることの多い今、そういう権力のあり方を見直してもいいのではないか、という話でした。


そういう感じの、知的好奇心を刺激される本でした。この本を所蔵してる、佐賀市立図書館にはちょっと行ってみたい。
あと、この連載があったのが、佐世保の小学生児童の殺人事件があった直後なので、その話題がやたらと出てくるんですが、地図で見たらすぐ先なのに、実際行くと非常に時間がかかるって場所が佐世保にたくさんあるのはガチ。大月隆寛と一緒に驚いてたけど。

*1:旧版は赤い表紙だったような気がします。違ったらごめんなさい。

*2:これは海外の地誌を語るにあたって固有名詞が避けられないのと同じようなもので、仕方のないわかりづらさだと思います。

*3:いくつかは誤解に基づくものだとわかって、恥ずかしい。

*4:利益を出そうという方向性とは逆方向の努力をしなければならない。

*5:輸血用血液がPL法の対象になってるとは知らなかった。

*6:もちろん被害者は救済されるべきです。しかし、被害発生をゼロにするためのコストは膨大で、かつ社会が負担できるコストには限界があり、どこに落としどころを見つけるべきかは大事なことです。

*7:血液型についてもこういう誤解がまだまだあるみたいで……。

*8:しかも、監督の提言を監督は自身で引き受けられる年齢ではなく、その物言いのスタンスは卑怯であるともいえる。

*9:相手に、遠まわしにたしなめられたりしててワロス

*10:監督が問題だと感じてるところってのは、結局のところ効率を重んじるあまり非効率の部分が取りこぼされたことだと思う。

*11:特に坂村先生には抱かれてもいいかもしれん。いや、僕がユビキタスについて勉強が足りなかっただけなんですが。坂村先生の専門の研究内容は組み込み型コンピュータというもので、それについてはとりあえずこちらで概要を見てください。

*12:そしてそれはおそらく正しいのだが、その健全な母子関係を支えるものは何か、という視点はすっぽり抜け落ちていて、結局のところそれを達成するのは母の努力に頼ると言い放つだけに過ぎないのではないか?

*13:富野監督も、男が悪い、男が馬鹿、ドウモスミマセン、ってなスタンスだったので、さりげなくたしなめられてました(笑)。