読んだ本

死なう団事件―軍国主義下のカルト教団

死なう団事件―軍国主義下のカルト教団 (角川文庫)
僕はかなり節操なく本を読むが、大体において本人はノンフィクションを好んでいるつもり。
で、この本は、別の本を買いに紀伊国屋に行ったら、なんとなく「昭和史七つの謎」という文庫が気になって、同じ作者なのでついでに買ったもの。
「死なう団」という響きがエキセントリックで良いじゃないですか。下世話な読み方ですが。
「死なう団」について一般的な知識は持ってるつもりでしたが、読むとやっぱり知らないことがあって面白い。
(死なう団事件の概要はこちら)
まず死なう団とは昭和7-8年ごろに興った日蓮宗系の新興宗教団体。
これを有名にしたのが、首都圏で起こした集団自殺未遂事件。
当時は戦争直前で、新興宗教団体がたくさん興り、また5.15事件や2.26事件などテロが横行した不安が支配した時期でした。
その集団未遂もその延長線上において考えられ、やがて彼らが解散し、太平洋戦争などの大きな事件が次々と起きるにいたってかえりみられることもなくなったわけです。
最初はそのエキセントリックさに惹かれて手に取ったわけですが、期待は外れた。
別にカルト教団のおどろおどろしい秘儀や洗脳なんかの記述はないんだもん。
とは言うものの面白かった。
もともと彼らは、既成宗教の批判から始まった教団であり、その成立からして戦闘性を内包していたわけだが、それがある一点からカルト化への圧力に変わるのが面白かった。
もちろんそうなるには彼ら自身だけでなく、環境の影響も大なんですけど。
興味深いのは彼らの攻撃性が、最終的には彼ら自身へと向かったこと。
カルト教団は、僕のイメージでは、世間から阻害された挙句に他者を巻き込んで破滅的行動に出るって感じだったのですが。
個人的な見解としては、ガンジーの無抵抗主義に通ずるものを感じた。
ガンジーのそれは、「堂々と」「多人数」で法を破るところにミソがあると思う。
逮捕等には逆らわないから、手荒なこともできないし気味が悪い。
それに何百人という単位だから拘留も無理。
そうやって相手を困らせるのがミソと思う。
その上で彼らを考えると、逮捕されるきっかけになった逗子への旅や、集団自殺などは、逮捕されるのが分かりきってるはず。
なぜなら、当時宗教団体は特高にマークされやすかったから。
実行に当たって盟主は「法を犯さないこと」を強調している。
これらから思うに、盟主の狙いは、逮捕されることで名を上げることではなかったであろうか。
逮捕はされるが違法ではないので釈放される、という読みではなかっただろうか。
どちらも不気味さをたてに戦う点では似てると思うんだけど。